「知ってるか?副隊長、結婚したんだよ。ああ、前からずっと付き合ってたあいつと。それで結婚式がもうじきでさ、アンタも来られたらよかったな。いっつも支えてくれてた副隊長の花嫁姿、見たいだろ?未婚のまま三十路こえさせちまったんだからさ、来る義務だってあるだろうと思うし。付き合ってたのを問いただしたとき、今は結婚しないって言ってたの、この隊があるからなんだって。まだ自分はアンタを支えなきゃいけないから、まだ自分は戦い続けなければいけないから、結婚はできないって。あんだけの美人を待たせてたんだから、結婚式くらい見に行くのが当然だよなあ?
 シェルディはまだアンタを待ってる。無駄だ無駄だって何度言っても聞きやしない。絶対帰って来るから待ってるんだと。いい加減女を待たせ過ぎだよ、アンタは。いい男は確かに、黙っててもいい女が待ってるモンだけど。アンタの場合は駄目だ。待たせたらいけない。……俺は待ってなんかやんねーよ。アンタは死んだ。だからもう帰ってこない。そうだろ?
 鬼魔道士は相変わらずだよ。今度はまた別文化の魔法を習得するって頑張ってる。それに最近使えるようになった召喚魔法を組み合わせて、異界に連れ去られたアンタを呼び戻す、そうだ。……馬鹿なこと言ってるよな、理解できねーや。俺だけじゃ面倒見切れねーよ。アンタが居た頃はウィリーもアンタも、必死に俺たちをいさめてくれてたっけなあ。
 ウィリーは…最近はやっと元気が出てきたみたいだ。争いには中立の立場をとってて、いったいどんな心境してるんだろう、って思ってたけど。やっぱり俺が考えるもんじゃなかった。あいつはあいつであいつだからこそアンタの死を悲しんでいて、その気持ちは俺なんかには想像できるだけのものじゃなかった。…逆に言われたよ、おまえは悲しくないのかって。

 馬鹿言わせんじゃねーよ。大体汚れすぎなんだよ、ここ。ちゃんと他の奴らは掃除に来てんのか?ああ、忙しいんだっけか。俺だけか?こんなに頻繁に来てんの。
 しゃーねーなあ。ほら。昔っからアンタは自分のまわりのことには気がまわらないとこ、あったよな。部屋が汚いってシェルディにしょっちゅう叱られてて。本棚にはもう得体の知れないもんばっか入ってたし。
 ま、こんなもんか?これはこれで中々男前になったな、うん。そうだ、今度骨も生けといてやるよ。何がいい?ベヒーモスでも狩ってくるか?やっぱあいつは男の勲章だよなあ。懐かしいぜ、ロクに戦えもしない俺を引っ張って、アンタがモンスター討伐に行ったこと。…ほんとに、死ぬかと思ったよ、あのときは。まさかドラゴンまで出てくるたぁ。

 …あんまり長くいると、昔のこと思い出しちまうな。しんみりするのも好きじゃねーんだよ。
 安心してくれ。アンタの意志は、まだ俺達のところで生きてる。

 また来るよ。この前のアレは、忘れてくれな。」



“本日、隊長と共にこの記念すべき日を迎えられること、大変光栄に思います。この日、貴方は母より産まれ、地に落ち、イヴァリースの空気を吸ったのですね。我々はまだ貴方には出会っておりませんでしたが、とても素晴らしい日だったことをよく覚えています。
 嗚呼、聖騎士、ザルバッグ・ベオルブ。貴方はこの日、この地に生まれた。我々は今、貴方と共に戦っている。貴方は武人だ、英雄だ。イヴァリースの民は、貴方をとても大切に思っていることでしょう。
 この記念すべき日に、貴方の下に、たくさんの幸福が訪れることを願って。

 ――北天騎士団、ザルバッグ隊隊員一同”



「ね、ねっ!上出来でしょっ!」
「すげー、お前やっぱすげーよ!イケルなこれ!」
「…ま、まあ…これでいいのか、なぁ…?」
「いいんじゃないかしら。こういうものは、気持ちが重要だってよく言うわ。」
「気持ち、ねぇ……。…面白い気持ちだこと。」









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